わかれの夜
久保田 彩水
美術学科日本画専攻
H227.3×W227.3cm
和紙、岩絵具、他
本作「わかれの夜」は道路照明の下で浮かび上がる高速道路に故郷を想い、住宅街をモチーフとして描いた作品である。画面右上には車の灯りがガードレールを照らし、それを見上げる窓あかりが人の息遣いを感じさせる。何気ない風景画だが、意図的な視線誘導と画面分割、明暗、硬軟を対比させた描写が効果的に機能している。道はS字を描くように上部へと導き、ガードレールと直線的な家屋の形態を額縁のように利用することで、動的な要素と視点を集中させる二重の効果を狙っている。また、暗がりに並ぶ家屋は、灯りに照らされたガードレールのもとで一層朧げに存在し、薄黄色に発光する窓灯りが作者の心模様を表しているようにも見える。理知的な構成と明暗の効果がこの作品に程よい緊張感を与え、おおらかな筆使いと色彩感覚が作者の優れた感性を窺わせる。単なる風景画に留まることなく、今現在にしか描くことのできない心理描写を追求した優れた作品である。