• Faculty of Arts / Art Award

2025_修士_映像_佐伯明日香

マヨネーズとケチャップ
佐伯 明日香
造形芸術専攻造形計画研究 映像メディア研究室
アニメーション(4分53秒)

誰の家にもあるであろう、冷蔵庫の中のマヨネーズとケチャップの物語である。マヨネーズとケチャップは人から求められ、頻繁に使われる事を自慢としている。お互いにマウントをとり合う2人であったが、ある日突然「老い」の現象にぶつかる。中身が出にくくなり何度もテーブルに頭を打ちつけられ、体は痩せ細り、この先を恐ろしく感じる。もちろんこれは人の一生のメタファーであるが、作品の中の人間の家族には「老い」や「死」は見当たらない。マヨネーズとケチャップと比べると人間の寿命はずっと長い為だ。この流れる時間の差異を物語の構造とする事で、作品に一層のアイロニーを生み出している。家族の食事場面はいつも幸せそうだ。だがマヨネーズとケチャップが辿った運命はやがてこの家族も辿るであろう事を鑑賞者は感じ取りその唐突なラストを見せられる。この唐突さは人が経験する死や不幸への無力感に対する表現として本質を捉えている。また生と死のモデルが家の中の冷蔵庫の中にあるという入れ子構造も興味深い。これにより「老い」や「死」が身近でどこにでも存在する事を思わせる。佐伯さんの線画はシンプルだが子供時代から培った書道の技能に裏付けされ、確信に満ちながらも力の抜き加減が絶妙だ。アニメーションの動きもミニマムな動きに留め、その表現が心地よい余白をもたらす事に成功立している。時間軸と入れ子の構造を使いながら佐伯さんの技量と人を楽しませたい、緩んで笑ってもらいたい気持ちが合致した完成度の高い作品である。