White Falls: I
安達 響
美術学科彫刻専攻
H450 × W350 × D450 mm
大理石
卒業制作「White Falls: I」は、朽ち果てた人間の頭蓋骨が深海で崩壊、霧散していく様子と、連続的な事象としてその場に新たな生態系が生み出されていく過程を、真っ白な大理石から彫り出した彫刻作品です。水流や泡、あるいは荼毘や生命エネルギーそのものとして表現された、立ち昇る死のイメージと、それらを糧にすることで育まれる魚や蛸やフジツボといった海洋生物たちの生命活動が、確かな造形力とカービング技術により、人間の死の象徴としての頭蓋骨を起点に彫り起こされ、作者の死生観が巧みに表現されています。
本作品は、沈んだ鯨の死骸の周りに新たな生態系が形成される鯨骨生物群集という現象から着想を得ており、作者の「私たち人間は、生命の循環や精神性をはらんだ死のエネルギーを必死に受け入れ、削るように浄化しながら生きていると感じる。」という言葉通り、誰にでも必ず訪れる死という抜き差しならない現実に対しての、作者なりの向き合い方が切実に示されています。
作者にとって、太古の海洋生物の死骸が降り積って生成される大理石を彫刻する行為は、死者、そして生者に向けた安息への儀式として捉えられており、私たちが死に対して抱く恐怖や虚無といった普遍的な負の感情からの解放を促しているようです。