七宝箱「白銀回」
粟根 誠一郎
造形芸術専攻 金属造形研究室
H130 × W200 × D100 mm
銀、銅、七宝釉薬
本作は、単純な模様の集合が複雑さを生む魅力を作品に落とし込む事を意図しており、銀色に光り輝く模様の繰り返しによって美しい循環を表現する事に成功している。文様は、四角を内包する四角というシンプルなもの。しかし、集合すると単体とは異なる印象を受ける文様であり、作品の全体感も上品で美しい銀白色にまとまった秀作である。
作者は、光を受ける上面と影のできる側面とでは異なる印象を与えることができると考え、作品のフォルムを従来の七宝工芸の「ハコ物」にはない各面に稜線のある「箱」の形体を胎から制作する事に挑戦した。また幾何学模様の図案に沿って銀彩(釉薬に純銀の粉末が含む)の釉薬を置く際には、若干高肉気味に置いて半焼き状態で焼き上げるなどの工夫を凝らし幾何学模様の銀彩の美しさを最大限に見せるための努力をした労作でもある。