• Faculty of Arts / Art Award

2024_雉子谷_02

ant room / flow
雉子谷 佳宏
美術学科油絵専攻
サイズ可変
ミクストメディア (平面、立体、映像などによるインスタレーション)

 雉子谷佳宏は「ミクロ・マクロ」または「循環 」といったテーマに取り組み制作を行なってきた。卒業制作「ant room / flow」ではレジン、石膏、映像、植物、蟻、絵画といった様々な素材と形式を組み合わせたインスタレーションを制作した。幼い頃から昆虫を飼い、蟻に関しての生態を調べてきたという作者は、自身が石膏で作ったアリの巣に生きている蟻を半年間住まわせ、蟻の巣がどのように変化していくかを観察する。結果として作者が作った巣は変容し、現時点では蟻の巣を模した空間の裏側に新たな巣が形成されており今後も形を変えてゆくだろう。地中で形成される蟻の巣と上空からみた地方都市の風景を並置し、地面に立つ私たちからは直接見る事ができない地下の出来事と地上での都市形成の様子を照応する試みである。
 また石膏やレジンで制作したジオラマでは日本国内数カ所の都市のマップデータを3Dプリンタで出力したものを並べ、レジンで固められた実物の植物と構成する事によって、都市のデータは氷の結晶のような小さな構造物となり、尺度が逆転したランドスケープとなっている。
 絵画や蟻の巣、オブジェなど、一つ一つに明確な意図を言及するのではなく、また蟻の生態系といった不確定要素を付加する事によって様々な解釈が生まれるように構成されている点も非常に興味深い秀作である。