• Faculty of Arts / Art Award

2024_鶴岡 真由_01

楽園はいらない
鶴岡 真由
造形芸術専攻日本画研究室
H1500×W4000 mm
土佐麻紙、岩絵具、胡粉、墨、アルミ箔、膠

 鶴岡真由は「とてつもなく純粋で美しい場所を描きたかった。」として日本画作品「楽園はいらない」を制作した。1.5m×4mの画面には日本庭園に見られる庭石や、剪定された木、建物、三日月、星、立方体などが観念的イメージで描かれている。作者は日頃から夢に見た場面や物を描き留め、この作品も作者のイメージする楽園を俯瞰的な思考と絡めて、夢で見るような不思議な世界として描きだした。4mの大作としてはより一層の表現の幅が必要とされるものの、物体としての説明を極力排除した画面からは作者の意図するところが的確に表現されているように見える。一見しただけでは解りにくい構成だが、楽園という文字に対する作者の考えを理解すると、銀箔でかすれた色彩は発色良い岩絵具の質感とともに生気を帯び、単純化した色面と線を用いる事でより一層の想像を掻き立てる。
 苦しみがなく、楽しさに満ち溢れた楽園は、苦しみから逃れたい逃避の映像化であり現実世界からの意志の否定と考え、その感情が交錯しない世界を目の前に見せることで、「ここ」はどんな場所か、絵と合わせて考えて欲しいと述べている。
 メッセージ性を内包する作品だが、表現は柔らかく瑞々しい。独自な表現、思想を展開する姿勢からは大きな可能性を感じると共に修了制作としての成果は高く評価出来る。