• Faculty of Arts / Art Award

2025_中山-琴音_から_03

から
中山 琴音
造形芸術専攻油絵B研究室
インスタレーション / 紙、木製パネル、液晶モニター、メディアプレーヤー、アクリルボックスなど。
サイズ可変

作者は、水引糸、綿、落ち葉、紙など、身の回りにある繊細な素材を扱い、出来事の儚さや脆さなどに注目し制作を行なってきました。修了制作では、紙が水を含んだ際に起こる伸縮や乾燥後の固着を利用した絵画や立体作品を制作しました。《から》- 絵画Iでは、水分を含ませた薄い紙を木枠に張り、絵画でモチーフとして用いる事の多い瓶や皿・オモチャなどをその紙の上に被せ、素材の凹凸を紙に写し取る事を試みています。紙が乾燥した後、モチーフや木枠を丁寧に取り去る事で、モチーフの存在が僅かに窺えるような空洞の絵画を制作しました。《から》- 絵画IIでは紙の上に氷を置き、溶けて蒸発する過程で生じる僅かな皺を提示しています。《から》- 海岸線は、宇品の海岸に打ち上げられた小石を集め、やはり水分を含ませた紙によって石の表面を写し取り、石の抜け殻のようなオブジェを白いパネルに多数配置し、海岸線を再現しようとしています。これらの紙と水による造形物は触れれば壊れてしまうfragileな存在として表す事で、出来事や記憶、モノもいずれは消え去ってしまう事を強調しているように感じます。作者によれば、数年前に近親者の死が続き、ご遺体に触れた際、「身体からみるみる水分が蒸発し空洞になってゆく」ように感じたという。こうした言葉に触れると、《から》- 絵画Iは「打ち覆い」のような印象も受けます。石膏による白い複製物が配置された空間を選び、白で統一した静粛な場を創出し、儚さや脆さをテーマとして制作を続けてきた一つの到達点として高く評価したいと思います。