蟹門
太田 啓斗
造形芸術専攻 彫刻研究 彫刻B研究室
H350×W240×D160cm
ダンボール、鉄
修了制作《蟹門》は、高さ3.5m、横幅2.4mに及ぶ、巨大な蟹と鳥居を融合させたダンボール彫刻です。作者の太田啓斗さんは、危険な交通事故に遭遇して以来、生かされた感謝を捧げるため神社へ朔日参りを行なってきました。その際、聖域を守護する狛犬や、神域と俗世を分かつ鳥居に強い関心を抱くようになります。本作では、卒業・修了作品展の玄関口において、日常から非日常へと世界が切り替わる瞬間の高揚と緊張を、鳥居を象った彫刻へと昇華させています。
校舎内には、学生たちが一切を捨てて打ち込んだ情念の宿る作品がひしめいています。それらは《蟹門》という結界を介することで、八百万の神、あるいは魑魅魍魎として祀られていると言えるでしょう。
当初は、ゲーム『モンスターハンター』の「シェンガオレン」をモデルに、股下を通り抜けられるゲート状の彫刻を構想していました。しかし、禁足地「八幡の藪知らず」の存在を知り、安易に人が通るべきではない門として、あえて上体を低く構えた姿へと変更しています。腰にしめ縄を締めたその姿は、力士が取組前に見せる蹲踞のように、深く腰を落とした姿勢を彷彿とさせます。この力強さは、軽率な好奇心で股下を潜ろうとする者を神隠しに遭わせるという禁忌を感じさせます。
素材のダンボールは、耐久性がないからこそ、一瞬の輝きを宿します。時の経過とともに朽ちゆく特性は生命の儚さを暗喩し、木材繊維から成る段ボールが再生を繰り返してきた背景を踏まえれば、そこにはある種の「御神木」のような神聖な佇まいさえ漂います。