• Faculty of Arts / Art Award

2025_鞠川 春佳_箱庭の祝日

箱庭の祝日
鞠川 春佳
造形芸術専攻 造形計画研究 染織造形研究室
H5000×W5000×D5000mm
銅製タワシ、銀糸、ナイロン糸、棒寒天、水切りネット

本作は、この世とこの世ならざる世界の境界である祝祭をテーマとし、人物と衣装と住居を象った3点の造形で構成されている。これらの造形は文化や概念、時間を反映する容れ物としての要素も含む。作者は、人にとって必要不可欠な衣食住を踏まえ、日常で使用している銅製タワシ、水切りネット、棒寒天を用いて、徹底した素材研究と試作を繰り返した結果から導き出された独自の技術によって、日常の祝祭を創出した。具体的には、棒寒天で作られた人物像は、祝祭の舞踊を通して神を招き入れる容器的な外形をとり、寒天の揺らぎのある繋ぎ目が美しく、陽光に輝く広大な水田のようでもある。銅製タワシで作られた衣装は、毛皮の儀礼性に着目し、銅の外皮を薬品で赤褐色から紫黒色、銀色へと変化させ、波状の銅の糸として組織織と輪奈織で織られたことで、獣毛の絶妙な質感を感じさせる。水切りネットで作られた住居では、藁葺き屋根の造形に魅了され、また棟飾りや煙出し窓から人の頭部を連想したことから、極細繊維の編み構造を生かした多量な伝線によって容量を増大させ、華やかな衣装にも見えるよう工夫されている。多様な繊維の性能が生かされ、織る、結ぶ、熱処理などが施されたこれらの造形は、それぞれ踊る人や毛皮、藁葺き屋根などを想起させるが、それ以上に現代の生活において希薄になりつつある動物、植物、鉱物といった自然界との繋がりについて想像を誘う。本作は、豊かな発想、優れた構成力、素材研究と技術が高次に調和した秀作である。